23.公娼制度

「持続化給付金について風俗店はその対象外とするのは合理的判断」との判決が東京地裁でありました。また以前には橋下徹氏の米軍兵による沖縄での性犯罪の多発に関連した「米軍の風俗業活用を」発言には批判の炎上などが起きました。ただ性風俗に関するする論議は時々瞬発に起きるものの、なにかタブー視し、触れるだけで集票の妨げになると思うのか、政治家もあまり触れたがりません。また今回の選挙では、ある政党の選挙公約に「痴漢の撲滅」が掲げてありました。ただ、この痴漢についても「泥棒を無くそう」というのと同じで、誰もが100%その心情には同感だと思います。ただ実際、その施策をどう巡らすかに苦慮するところで、今回の政党公約にもその視点や具体策こそ付け加えてほしかったと思います。ちょっと横道にそれましたが、それが性犯罪の抑止になるかどうかわかりませんが、風俗問題の中でも公娼制度とは何か。また今でもそれが認められている国があるのか、それを今日の「疑問」とします、では…。

疑問23(公娼制度)

日本における公娼制度とは、特定の売春、接待行為を公的に保護し、特別の権益を与える制度です。この制度は鎌倉時代の遊女を起源とし、江戸時代には特定地の遊郭確立を経て明治、大正、昭和に至るまで、この制度は保護され続けてきました。ただし昭和33年(1958年)の売春防止法により、制度上の娼婦は見られなくなりました。まさにこの時期の描写として水上勉氏の小説に、京都の歓楽街に娼婦狩と呼ばれる警察のトラック部隊が現れ、そうした女性を片っ端からからトラック乗せていく情景が出てきます。またこの近代公娼制度はその確立期から人身売買禁止の思想との共存性をもっていました。私娼を取り締まる一方で、年齢などの条件を満たせば登録許可の鑑札(身分証)が発行され、また性病検査なども義務制としました。またこの制度廃止時(売春防止法成立時)には、著名なマルクス主義思想家の学者で当時参議院議員でもあった羽仁五郎氏の強い反対意見など、保守革新の枠を超えた幅広い論争が巻き起こりました。その反対理由は、それで買売春行為自体がなくなるものではなく、ただ単に社会の地下に隠れ温存され、反社会的勢力の資金源になる危険さえ生む。あるいは従事する女性の生活基盤を奪うなどといった理由でした。実際、今にいたるまでそうした予見の一部は当たっているようです。ここでちょっと補足的に「売春」といった概念についておさらいです。先ず売春防止法第3条で「何人も売春をし、またその相手方となってはいけない」と規定しています。そして2条では「この法律で売春とは、対償を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう」となっています。これは要するに、あくまで夫婦やパートナーや恋人ではない不特定の相手との「性交」を言い、また性交類似行為や同性間の行為は買売春にはならないと理解されています。たとえばソープやデリヘルなども表向きには性交疑似行為止まりと考えられており(あくまで見てないので)、風俗営業法のもとで合法と理解されています。ちょっとアノ~?ですが。ただその売春という概念。それがそもそも誰かさんから「何が悪いの!」なんて聞かれたら実際「何が悪い」のでしょう。ちょっとこの話になると深淵すぎるので、次に話を進めます。現在の世界を見渡すと、そんな公娼制度も厳密には少々内容は違いますが、この三か国が「飾り窓」で有名です。まず同性婚をいち早く合法化するなど自由の気風を謳歌するオランダ。2000年には売春が合法化され、永い歴史をもつアムステルダムの飾り窓は益々その地保を固めています。次に近年売春が合法化されたドイツのハンブルグにも有名な飾り窓があります。そしてベルギーのブリュッセル。他にも売春を合法化した国が多くあります。内容の精査が必要ですが、一説にはそうした合法化の国は世界の半数とも言われています。ただそうした飾り窓のある都市も今回のコロナ禍の影響は如実で、ドイツのケルンにある売春施設(そのビルは10階を超えるランドマーク的存在)も破産の危機に直面しているそうです。またドイツでは売春の非合法化を求める意見も根強く、その職業の女性らの団体との非難合戦も多々あるようです。そもそもオランダの合法化がどのような理解で行われたのか、それは次のような理由からです。まず➀売春を犯罪の枠組みから除外することで、さらにそれが安全につながる。そして➁そもそも性行為を売り物(商品)にし売春するのは自由だという発想。さらに③売春は選択の自由における価値を反映するものと定義し、女性が体を売りたいのなら、それが本人の選択なら了承すべきだというのが、以前からあった政治家や市民の主張でした。以上長々となりましたが、なにか取り留めのない、分かりにくい話になってしまいましたことお詫びいたします。ともあれ価値観は多様化の時代です。なのに「売春の話」ってか? 「バカ、女性蔑視発言」もしくは「現代の奴隷制度だ!」などと一網打尽に捕らえて、丸めてポイなどされずに議論の俎上に乗せてみるような社会であればと、つくづく最近は思うのですが、どうでしょう。

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