猟銃でまた人命が失われました。ある意味野蛮な米国のように銃が野放しでない日本で、どうして度々こんな悲劇が? そこで「日本の銃規制」についてを、本日の「巷のHatena」テーマとします。では…
疑問(91)日本の銃規制
発砲事件がある度、ニュースでよく見聞きする話ですが、米国では合衆国憲法修正第2条で「武装権」を認めています。また2008年には合衆国最高裁判所は武装権に伴う「個人的権利説」を認め、一般市民の銃所持を追認しました。一方日本では明治に入るまで、特段の銃規制はなかったため(ご存じのように坂本龍馬も所持していました)、狩猟による乱獲のために急激な鳥獣減少や誤射による事故多発が問題視されるようになりました。そこで時の明治政府は1872年(明治5年)に鉄砲取締規則、鳥獣猟規則を制定しました。そして1899年(明治32年)には鉄砲火薬類取締法を制定。さらに1910年制定の銃砲火薬類取締施行規則(明治44年)によって、軍用・非軍用に関わらず「拳銃、短銃、仕込み銃など」を規制の対象としました。ただこの規制でも、銃の「所持、授受、運搬、携帯」は警察官署の許可があれば、基本的には認められるといった、ゆるゆるのものでした。つまり一般個人でも護身用の拳銃所持や携帯は普通に認められていたということです。そして驚くことに、陸軍軍人が正装用に持つ拳銃、それに郵便逓送人(今の郵便配達員)が僻地で郵便物を盗賊から守るための護身用拳銃については、そうした許可さえ受ける必要もありませんでした。そしてそれ以降、敗戦の1945年までの日本の銃規制は、規制をかけつつ原則として容認するといった緩いものでした。ところが敗戦の混乱に乗じて、旧陸軍から大量に盗まれた軍用拳銃が市中に出回ったため、驚いた政府および占領政策を遂行するGHQにより、1946年「銃砲等所持禁止令」が出されました。この勅令によって日本で初めて、狩猟等を除き民間人の銃所有は禁止されました。そして1950年11月ポツダム政令として銃砲刀剣類等所持取締令が施行、1958年銃砲刀剣類取締法、1965年銃砲刀剣類所持等取締法に改められ、その後も改正を受けて現在に至っています。そのため現在市中に出回っているものは、許可を受けた猟銃以外には不法に所持する暴力団の銃の他、一部市民の改造拳銃や輸入拳銃などになっています。現在、銃の所持許可は各都道府県の公安委員会が管轄。ただ審査基準、試験の難易度は各県でバラツキがあるようです。例えば東京に比べ熊対策の必要な地域などでは、そこの猟友会に所属すれば緩くなるといった話があります。
次に、今日本では拳銃の携帯・所持ができる職業は幾つあるでしょう? まず➀警察官、➁自衛官、③海上保安官、④税関職員、⑤入国警備官、⑥入国審査官、➆刑務官、⑧麻薬取締官(厚労省)、⑨麻薬取締員(各都道府県)、⑩在日米軍基地の日本人警備員…以上10の職業です。
警察庁のHP「日本の銃器情勢」によると、2022年の拳銃の押収件数は321丁(前年比+26丁)、発砲事件数は9件(前年比-1)となっています。この発砲件数9件の内、暴力団関係が6件と大半を占めています。またこの発砲件数9件は、同年の米国647件に比べ格段の少なさであり、最近は日本も物騒になったとよく言われていますが、米国などに比べたら治安の良さはまだまだ捨てたものではありません。ただそれでも日本国内の2017年時点で存在する銃の推計数は、合法と違法所持を合わせて37万7000丁(100人当たり0.25丁に対して米国は120丁)とされています。意外に多いですね。
ともあれ「世界一厳しい日本の銃規制」と言われる所以は、銃所持の許可を得るためには、➀1日かかる講習、筆記試験、射撃教習を受ける必要がある。精神面の評価、薬物検査、厳格なバックグラウンドの検査も行われ、犯罪歴、個人負債、組織犯罪への関与、家族や友人との関係なども審査の対象となる、そして➁銃を入手した後も、所有者は銃器を警察に登録し、銃と銃弾の保管場所を届け出る必要がある。また銃と銃弾は別々の施錠された区画に保管が必要。③毎年警察による銃器の検査を受け、免許を更新するには3年に一度再講習と試験を受けなければならない等々の厳しい要件があります。しかし長野県内における今回の殺傷事件などは、そうした厳格な審査をパスした猟銃によるものでした。そしてその銃は殺傷力が強く、被弾すれば骨は粉砕骨折され、臓器は致命的な損傷を受ける単発式のスラッグ弾によるものでした。また同様に猟銃による発砲事件ではよく使われる散弾銃についても、多数の小さい弾丸を散開発射(周りに飛び散る)するもので、かねてよりスラッグ弾と同様にその残虐性、さらには狩猟での動物虐待にも繋がるのではといった批判が続いています。正常な心理状態の人が、ある日ある時、突然豹変する。そんな不安を内包する日常生活の中での銃。さらなる銃規制を考えてみてはどうでしょう。
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