固い話が続いたので、今日はちょっと柔らかく…。ですから「疑問」といっても今日は取るに足らないような、なんだ?というような、それでどうした?という話です。ただその話を聞いた時、ちょっぴりホンワカした気分になったのも事実です。
疑問16(透明人間)
それは最近、ある銀行の支店長から聞いた話です。今は四十半ばですが、その支店長が入行して間もない、まだ新米行員だったある日の朝礼。いつものようにその店の支店長は整列する行員の前に立ちました。すると開口一番「僕は昨日不思議な車を見たよ。運転手の乗っていない車をね。ただよく見たら助手席にはB君が真剣な顔してまっすぐ前見て乗っていたけどね。とにかく不思議だったなあ」と話し、いつものように「では、今日もお客様第一で」と締めくくり支店長室へ戻ったそうです。行員どうしは「支店長の話なに?」「いやさっぱり」「カイモク」などと言いながら、そのあと営業担当者は会議室に集まったそうです。通常、取引先の話題になるのですが司会役の副支店長も開口一番「B君、あの話って何だい」と聞きました。ただいつも口数の少ないB君ですが、その時はまさに貝。しばらくの静寂が続き、A君が耐え切れなくなって下記の事実を明らかにしました。まず、A君とB君は同じ社用車に同乗していました。この銀行では多額の現金持参や上席者との訪問など特段の事情がないかぎり、一人乗車での営業活動を原則としていました。ところがA君B君は時々同乗して朝一番のコーヒータイムに出かけていたようです。もちろん周りは薄々は気付いていたようですが。この日も二人は同乗して出かけましたが、なぜかいつもと逆の役割、つまり、いつも運転手はA→その時は助手席、いつも助手席はB→その時は運転手…であったようです。両人に聞くとなぜその日に限ってそうしたのか理由は定かではなく、まさに魔が差したといったところだそうです。両人日頃から支店長の目は気にしていたようで、通常助手席のB君は運転するA君の「あ、支店長!」の声で瞬時に前かがみになって隠れていたようです。しかしその日は役割が逆。瞬間前かがみの技術を鍛えたB君はその日運転手。かくのごとく理由で透明人間の運転、もしくは既に当時、自動運転車が開発されていたなどといったNHK幻解!超常ファイルのよき取材対象になったかも知れません。以上が本日の疑問とその単純な答えに繋がる穴です。余談ですが、そのA氏B氏とも、もちろん一切お咎めなどなく、その後も順調に昇進されたそうです。また当時の支店長も役員を務められたのち退職され、今は社会福祉に携わっておられるとのことです。そして知り合いの支店長はこの話を終わるころ「銀行員は融通が利かない、冷たいとよくいわれるけど、昔はもう少しいい加減でしたね、だから今より楽しかったのかなあ」と少し笑ってみせました。
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