台湾総統選挙が終わりました。予想どおりの結果です。これ軍備増強を煽るため台湾有事を盛んに叫ぶ、右翼政治家や一部のメディアには残念な結果かもしれません。それでも「なんでや!総統に民進の頼氏が当選したのだから、いよいよ中国の武力進出に決まってるやんか」と仰る方。「そもそも中国は台湾へ侵攻する気なんてあるの?」 ではなぜそう思うのか。そんなことや「米国の煽り」も含めて今日のHatenaにしたいと思います。
112煽(あお)る米国と煽られる日本
2024元旦の精進湖(pm2:45)
まず初めに日本国内で台湾有事を盛んに煽る人たちはといえば…。ズバリそれは米国シンクタンクなどから流される夥しい情報に感化され、有事といった不確実性を利用して国民の不安を駆り立て軍備増強の目論を実現したい人たち。そうした人はマスコミ人であったり、学識者であったり、政治家だったりしますが、おしなべて米国の価値観を普遍的価値観と崇め奉り、精神の安寧を得ている人と言っていいでしょう。それは白井聡氏が著書「国体論」で指摘したように、戦前の天皇崇拝から戦後米国盲従への転換といった様相を呈しています。その具現として国内に散在する130以上の米軍施設。中でも沖縄の米軍基地問題は今なお続く敗戦国としての屈辱的隷従形態のままであるのに、親米保守あるいは親米右翼といった人たちからは反米闘争や抗議の声をほとんど聞くことはありません。むしろ米軍基地があるからこそ中国や北朝鮮さらにはロシアの侵略から日本は守られているといったフラウドが声高に叫ばれています。ではそうした中で、なぜ台湾有事つまり中国による台湾への武力侵攻はありえないと言えるのか、考えてみたいと思います。まず6つのポイントです。➀総統選挙と同時に台湾の国会にあたる立法院選挙も行われました。国民党は37⇒52議席 民進党は62⇒51議席……へ変化。どうです、この絶妙なバランス。米英や日本に煽られても、台湾国民の半数以上は戦争ではなく中台の対話を求めているのです。➁そもそも17万人いる台湾軍。その中でも幹部クラスは、中国人を親に持つ中国ルーツの人(いわゆる外省人)が多い。そしてその人たちが今でも軍内では強い発言力を持っています。③さらに台湾軍幹部の9割は退役後中国にわたり、台湾軍の情報提供を見返りに一儲けしているのが実態です。そのため台湾検察署では現役あるいは退役に関わらず、将校にたいする情報漏洩捜査は今も頻繁に発生しています。かつて台湾軍は国民党軍として中国で日本と戦いました。有事を見据え今後、日台連携で中国対抗の絵を描いても「日本と距離を置くあの台湾軍が、いまさら日本と領土防衛で本当に協力できるのか」多くの課題を残す台湾。緊張は日に日に高まっている。(この部分は2023.2.28日本経済新聞記事による)④前総統蔡英文は就任後、軍が将来台湾の最大のアキレス腱になるとして改革を試みましたが、軍は蔡英文の対中国強硬策に抵抗し続け、結果として軍を掌握できぬまま終わりました。⑤台湾が反目するのは中国ばかりではありません。「釣魚台(尖閣諸島)は台湾固有の領土だ!」台湾東部の漁村には、こうした看板がよくあります。蔡英文も「釣魚台は台湾の領土で、政府の一貫した立場だ」とし、事この問題に譲歩の言葉はありません。また2008年に尖閣諸島近くで台湾漁船と海上保安庁の船が衝突した折には、当時の行政院長(日本でいう首相)劉兆玄は「(日本と)開戦も排除しない」と発言。さらにこの釣魚台(尖閣諸島)の領有権主張では中台一致団結して事に当たろうといったものが国民感情として明確に今も生き続けています。⑥1958年10月、中国人民解放軍は中華民国の金門島に侵攻するため、激しい砲撃を浴びせましたが国民党軍は地下壕で耐え抜きました。それ以来、金門島は台湾の最前線基地の島となっています。しかしその金門島の住民意識は反中国ナショナリズムに全く傾倒していません。「金門島」は台湾有事の際、中国から真っ先に狙われるとも言われ、1958年以降、中国軍から50万発近い砲弾が撃ち込まれました。今も数千人の台湾軍兵士が駐留しています。しかし島にはこんな現実も。<金門島商店主談>「私たちは、中国との緊張なんて気にしていません。一般市民は商売が繁盛することが大事です。」また金門県議会の董森堡議員は、「島は中国にとって、もはや標的ではないと考えています。」「金門島は天然資源もなければ、香港のような金融や情報の中心でもありません」「もしその時、中国に自由と民主の土台があるなら、私は統一を受け入れるでしょう。戦火を経験した「防衛の最前線」は今も揺れ続けています。(この部分は2023.4.7 TBS番組による)…このように台湾人の多くは戦争など望んでいません。にもかかわらず戦争を起こそうと躍起になっている人。それはむしろ米国民主党のバイデン政権と共和党チャイナロビーです。さらに本国で人品評価のすこぶる悪い米駐日大使のラーム・エマニュエル氏は対中批判の急先鋒です。先日はX(旧ツイッター)にこう書き込みました。「中国が日本に対して経済的威圧を行使するなら、米国は友達作戦2.0で真っ向から対決する。中国は欺瞞的に日本の水産物輸入を禁止する一方で、日本海域で全く同じ魚介類を獲っているのだ。抜群に美味しいのだから彼らを責めることはできないが、その偽善は批判されてしかるべきだ。米国はこの水産物をもっとふさわしい市場、つまり米軍兵士とその家族に送る。これは友達作戦2.0だ。」(X部分は2023.11.1 J-CASTニュースによる)米国は建国から日も浅く、僅か250年足らずの確固たる歴史基盤もない国です。そのため政治や文化、あるいは芸術に至るまで、他の先進国のように長い歴史的検証に晒されたこともありません。そのため国家としてのあり様が、果たして正しく進んでいるのかどうか。そうしたこの歴史の浅い多民族国家がもつ不安心理が、「世界でNO1」になることこそ安寧を得るための道標とさせたのでしょう。そして政治、経済、軍事では長い間NO1の地位は不動でした。ところが宿敵ソビエトも崩壊し安住が約束されたと思った矢先、今度はドーン!と中国の台頭です。そこでまず経済について話を進めると中国は同じ社会主義国であっても崩壊したソビエトのように「計画経済」ではなく、「社会主義市場経済」をひっさげ世界経済の中へ飛び込んできました。そして中国製なるもの、日本製品もかつてはそうであったような「安かろう悪かろう」の評価も今では霧散し、中でもファーウェイの最新式7ナノ半導体を搭載したMate60proの昨年8月発売は、アップル製スマホの売り上げに大打撃を与えたほど、その性能において引けを取らないもののようです。もちろん世界中の専門家にとってこれは驚愕の事実であり、発売日当日に分解して調べたところファーウェイ子会社の海思(ハイシリコン)が作った麒麟9000Sという2018年発売のiPhonに使われたチップの技術と同水準のIC集積回路が入っているということが判明しました。米国は商務省が中心となって2018年から対中半導体封じ込めといった中国包囲網を実施していたのですが、Mate60proの発売で一気に潰された形となりました。専門家によると7ナノのロジック半導体を中国が自力でつくれるようになったということは、2ナノまで今の技術力でつくれるということのようです。また中国の国家統計局は1月17日、2023年のGDP成長率予想を5.2%(年度予想どおり)と発表しました。なお米国は通年で2.5%の予想です。そして英国シンクタンク(CEBR)によると中国は2028年までに米国を抜き世界最大の経済大国になり、インドも2030年までに第3位の経済大国になると予想しています。次に軍備について少し触れると、抑止力としてその必要性が言われる核兵器(米国、ロシアともに5000発ずつ、中国400発~2000発)についても、米国は50年前のオンボロ核兵器のため、抑止力以前に発射能力があるのかどうか疑わしい。米国の核兵器には北朝鮮の軍事パレードで見るような移動型(トラックに乗せる)のものはありません。あるのはコロラド州を中心として、地下の穴の中に掘って設置する核サイロ方式です。これはサターンS型の推進ロケットの先端に、核弾頭と起爆装置を付けたもの。これとよく似たサターン5型で宇宙飛行士(国際宇宙ステーションにはウクライナ戦の最中でさえ常に2名のロシア人がいるのは不思議です)をステーションに飛ばしています。「宇宙ならいいけど核弾頭となるとねえ…ちょっと不安」とまあ米国のロケット技術はその程度まで落ちているようです。さらに軍事スパイ衛星の技術力で言っても、量子暗号通信の分野では、すでに中国の方が優っているようです。そしてこれら戦術核と宇宙空間戦での米国の劣勢は軍事力の趨勢を象徴し、過去のように直接戦争に参加せず、他国をそそのかし戦わせる代理戦争化の要因となっているのでしょう。さあ次は政治や米国社会そのものです。ズバリ「見習うべき普遍的価値なんて米国にあるの?」…です。実際行ってみて見るといいのですが、10年前と比べても、米国の西海岸の都市はどこも貧富の差が酷く、街の景観劣化も甚だしい状況です。そもそも米国には満足な健康保険制度がありません。公的、民間に関わらず無保険者は約3千万人です。殺人も多くニューヨークだけで年間433件(2023年)。ニューヨークのレイプ事件は128件(2022年)。全米の薬物中毒死は年間約10万人。銃規制が叫ばれているのに、米国人の所有する銃は4億3千万丁と人口より1億丁も多い。そして政治の舞台である議会と言えば、前代未聞の占拠事件です。そして各分野にわたる徹底した商業主義の敷衍。例えばスポーツ選手への超法外な年俸などもその象徴です。そして悪いことに、そうした内政の腐敗が外交手段としても使われることです。自分に都合の悪い国へのクーデター援助は枚挙にいとまがあません。また気に食わない他国元首の多数暗殺(アダムフセイン、カダフィー、チリのアジェンデなど世界中いたるところで)。いろいろ米国の批判を並べましたが、その特異な性質を簡単に述べればこのようになります。つまり自国より劣っていると思う国には庇護の気持ちで接するのですが、ひとたび自国と同等、あるいは追い越されそうだと思う国には冷酷な仕打ちが始まります。冷酷な仕打ちとは、その国力を消耗させるため、例えばドイツや日本を疲弊させるための軍備増強の要求や戦争中の国への軍事支援、経済制裁の強要などがあります。まさに今行われているウクライナ対ロシア戦ではロシアの消耗とウクライナを支援するEUの疲弊を両方目論んでいます。また中東ガザに対するイスラエルの侵攻についても、イランなど中東諸国を戦火に巻き込むことによって中東各国の協調を分断し、軍事力の消耗や中国やロシアの浸潤を防ぐことを期待しての行為です。具体的にはミンスク協定を反故にさせてまで、ロシアの最も嫌がるNATO地域の拡大を米英が煽った事が、今回のウクライナ戦争の発端であるように、台湾有事についてもペロシ米下院議長台湾訪問のように「ハチの巣に敢えて棒を突っ込み、かき回すような行為(羽鳥モーニングショウでのコメンテーター玉川氏の発言)」と評されるような思慮の無い行為で、盛んに「有事創出の煽り行為」を行っているのが米国です。かつて中東で最も民主主義的な国であると評されたイラン。そのイランに対しても、米国のハチの巣に棒を突っ込む愚行の数々は、その強権化を増幅させてしまいました。また北朝鮮についても、今までのような強権的な対応一辺倒でなかったら、今ほど偏屈で強権的な国になっていなかったかも知れません。そして日本はといえば、停戦の仲介でもするのかと期待したのに、米国の従順なメッセンジャーガールとして「ウクライナ支援お願いしま~す」といった無為無策で卑屈な陳情行脚の外務大臣。今年11月5日の米国大統領選挙(一般有権者投票)ではトランプ氏の勝利が確実です。そのトランプ氏、バイデン氏のように「アメリカこそ普遍的価値を体現する」なんてバカな事は思わないし言わない実利主義者であり合理主義者です。2期目のトランプ氏の外交政策は1期目にくらべ大きく変化するはずです。その時日本はどうするのでしょう。これでは北方領土は永久に返ってこないし…どうしよう。ともかく、コバンザメ気質を払拭し、米国に煽られない知性と勇気を願うばかりです。
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